有馬療養温泉旅館 (川崎市宮前区)

低張性　中性　冷鉱泉　　[泉質名]単純鉄冷鉱泉　[成分量0.37ｇ・pH6.6・泉温13℃]

シンプルな7.8人入れば満杯になってしまう浴槽に濃い黄土色の温泉が満たされている。
濃い温泉なので見落としていたが、すくって見ると新鮮な湯の証拠である湯の花もしっかり見られた。

見た目のインパクトとは裏腹に無味無臭であるが、小さいライオンのような口からチョロチョロと注がれている透明の水を、飲泉用で置かれていると思われるコップに掬って嗅いで見ると・・凄まじい鉄臭がする。口に含むとイガイガ感も感じるまごう事なき源泉であった。

動力掲揚との事だが、分ごと1ℓにも満たない貴重な源泉をこうして提供しており、最近のスーパー銭湯とは一線を画している。浴槽前タイルに使用掲示が記載されており加温以外はされておらず、源泉100％で提供されている。

消毒しない提供方法をとるために、毎日浴槽の湯を抜き清掃している・加温設備を月に一度分解し洗浄しているなどの表記まで存在し、恐らくオーナーは相当温泉の質に気を配られていると推察できる。

成分表を見ても鉄分を29㎎/1㎏含んでおり療養温泉と名乗れるレベルで『本場の』有馬温泉の倍程度含まれているのも特筆に値する・・。なお今回は見られなかったが朝一だと油膜が漂っていたり黒い原油みたいなものも浮游しているらしい。人も午後から多くなるとの事なの、朝一の訪問をおすすめしたい。温泉の鮮度が高いのか浴後のポカポカ感を強く感じる。

余談ではあるが受付入口に厚生労働大臣の表彰状も置かれており(表彰日時が訪れた日から1週間前以内ぐらいの最新の物であった・・)民間人では最高レベルの賞も貰ったとオーナーが誇らしげに話しておられた。

オーナーが三代に渡って営業している温泉で歴史も長い温泉であるが、外観はビジネス旅館風の温泉施設である。
館内は手狭で一応二階には旅館設備があるとの事だが、一階は人の家に上がり込んでしまったのかなと思える雰囲気である。

浴室は、タイル貼りの浴槽で成分の付着が見られる。恐らく最近のスパ施設に慣れてしまった人だと辟易されてしまうかもしれない温泉である。
しかし古い感じの地元民向けの温泉施設などが好きな人は、神奈川県の川崎にもこんな温泉が有るのだな・・と思っていただけるだろう。

上述の通り、シンプルな立ち寄り湯で休憩所も設置されているが手狭な上、地元の方も利用しているので利用しづらい。あまり長居は出来ない温泉施設であると認識した方が良い。

しかしながら宿泊も可能で素泊まりなら7000円程度で宿泊も可能。多摩や川崎近郊の旅館なのでビジネス目的でも有用な宿泊施設と言える。

浴室に入ると一人先客がいた。少しお話してみるとかつては何百カ所も温泉を回ったが家から30分ぐらいの所にあるこの温泉が一番良かった事に気づいた、と仰っていたのが大変記憶に残った。見た目50代ぐらいの人かなと思ったが70代との事で驚く。ここに来てから他の温泉に行けなくなってしまった。と苦笑いしていた。

肌が引き締まるのかシワが消えて若く見えるようになった(※本人談)との事・・体が悪いご老人がここを訪れて症状が改善し常連になってしまったケースも多いという。スポーツ選手や芸能人もお忍びで来たりしていたらしい。

最近のスパ銭ブームに隠れた、地元高齢者人気の実力派温泉で有ることは間違い無い。
1200円の入館料はやや高いが、タオルバスタオルが付属したり、別途シニア割引・夜20時以降割引もある。

施設重視で無く、お湯本位目的なら訪れる事をオススメ出来る温泉施設だ。